本セッションには学内7の研究科・研究所・センターより、9名の先生が参加されました。セッションの構成は、(1)講師である環境安全保健機構健康管理部門(留学生相談室)の梁瀬先生による京都大学(以下、「本学」)の留学生の概要・事例紹介、(2)グループワーク並びに、その議論に関する全体での発表と質疑応答、(3)留学生対応に際しての留意点と、本学の支援体制に関する梁瀬先生からのご紹介、(4)本セッション全体に関する質疑応答というものでした。
(1)梁瀬先生からの概要説明では、留学生を見かけることが珍しくない今日において、彼らとともに気持ちよく学び、多様性を建設的な議論に結びつけるために教員に何ができるか、という問題提起があったのち、現在の留学生事情と留学生特有の諸問題、異文化適応にからむメンタルヘルスの問題とその特徴とが紹介されました。その上で、グループワークで検討いただく内容として、実際の事例に基づき細部を改編した、メンタルヘルスに問題を抱えた留学生の事例が呈示されるとともに、彼/彼女に対する対応が紹介されました。
(2)グループワークは、3名ずつ3グループに分かれて実施されました。先に紹介のあった留学生の事例に対して、A:気になる点、B:問題点と思われる点、C:望ましい介入の時期はいつだったか、D:介入の最初のステップは何が良いか、E:彼/彼女を支えるために活用できる社会資源に何があるか、F:これからどう対応していくべきか、という6項目について議論しました。
ワーク後の全体での議論並びに質疑応答では、「教員が分け隔てなく接すると逆に孤独を産むかもしれない」(上記Bに対して)や「表情が乏しいと気づいたタイミングで介入すべきかもしれない」「研究室配属となった最初の段階からより積極的に介入しておくべきかもしれない」(以上、Cに対して)、「メールだけでなく対話による直接的なコミュニケーションが必要だろう」(Dに対して)、「留学生が参加できる複数のコミュニティがあると有用では」「母国と関係するようなもの・コミュニティの存在があれば大きな助けになるのでは」「大学だけでなく自治体が運営するようなものも利用が望まれる」(以上、Eに対して)、「定期的な1対1での対話」「若手教職員による働きかけ」「研究室だけで抱え込まない体制」「全学として、留学経験のある教員を紹介し、留学生からアクセスできるようにしてみては」(以上、Fに対して)といった意見が出ました。これに対して、講師の梁瀬先生からもフィードバックがあり、メンタルヘルス危機リスクの高い学生への介入について、活発な議論がなされました。
(3)留意点と支援体制の紹介では、日頃から学生を観察し、異変に気付いて早期に介入することや、学内外の社会資源の存在を知り、必要に応じて専門職と連携することが重要とのお話がありました。また症状が重篤なケースでは、早い段階で家族や大使館との連絡が望まれる事態もある、とのアドバイスもありました。その上で、京都大学にある留学生を支援する複数の部局を紹介されるとともに、そのうちの一つである留学生ラウンジきずな “KI-ZU-NA” とそのアドバイジングサービス、留学生相談室を梁瀬先生は紹介くださいました。
(4)全体での質疑応答では、「学内の支援体制は留学生に伝わっているのか」や「精神医学に精通していない素人である教員が介入することで、逆効果にならないか」といった質問がありました。前者の質問に対して梁瀬先生からは、毎年複数回留学生を対象としたガイダンスを行っており、留学生の支援体制周知に努めている、とのご返答がありました。また、後者の質問に対しては、治療は専門家の手によるものではあるが、それ以前の段階として、日常の声かけが重要となること、そして、もし留学生が日本語・英語に不慣れであっても、人としての関わりが大事であるのでジェスチャーでも有効であること、異文化については教員側も受入れ留学生の国・文化を知る努力を忘れないようにしていただきたいこと、これらのご指摘・ご提案がありました。
以上で、計90分に及ぶセッションを終えました。少人数のセッションでしたが、参加した教員の方々からは忌憚のないご意見があり、学部、大学院に多くの留学生を抱える本学にあって、留学生たちとどう接していくべきかについて改めて考えを深めるとともに、具体的な対応方策、支援体制を知る場として大変有意義な機会となったようです。
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