新任教員教育セミナー(2020.9.24開催)

テーマ5「これからのオンライン授業を考える」

  • 事例紹介:田口 真奈/酒井 博之 准教授(高等教育研究開発推進センター)・梶田 将司 教授(情報環境機構)
  • ファシリテータ:鈴木 健雄 特定研究員(高等教育研究開発推進センター)

 本セッションには学内13の研究科・研究所・センターより、29名の方が参加しました。その冒頭、田口准教授より趣旨説明がありました。田口准教授は、今後、コロナ禍が過ぎ去ったあとも、対面授業に加えてICTを活用することで、授業準備を効率化し、教育効果を上げることができるとした上で、学内のオンライン授業のグッド・プラクティスやICT活用事例を紹介し、それらを手掛かりに議論してもらうことで、これからのオンライン授業を考えてもらいたいと説明されました。
 続いて参加者は、Zoomの「ブレイクアウトルーム」の機能を用いて8グループに分かれ、「20年度前期のオンライン授業や講習会等の経験」「今日のセッションで特に知りたいこと・聞きたいこと」について情報共有・議論しました。グループは予め、所属部局や職階が極力バラバラとなるよう決めてありました。ワークに際してはオンラインホワイトボード「Miro」(https://miro.com/index/)を使用しました。オンライン授業で用いた個々のツールと並んで、参加者の関心が特に高かったのが、学生とのコミュニケーションの取り方についてでした。
 Miroを通じて共有された意見や質問を参考にしつつ、続く講義パートでは、酒井准教授より京都大学から配信されているオンライン講義MOOCとSPOC(KoALA)の概要説明と、それらを実際の授業に組み込んだ事例の紹介がありました。続いて、梶田教授より、京都大学の教育の情報化について説明がありました。コロナ禍によって、もともと順次実現していく予定であったBYOD(Bring Your Own Devices:学生の個人PC必携化)が一気に進んだこと、それに伴って京都大学全体として情報化の新たなロードマップを構築していることなどが説明されました。
 参加者はその後再度グループに分かれ、「講義を聞いて浮かんだ疑問や新しく知ったこと」をシェアするとともに「本日ぜひ解決したい質問・疑問」を検討・決定しました。
 グループワーク後の全体会では、この質問・疑問に対して、田口、酒井、梶田の各講師がそれぞれ答えていくという仕立てを取りました。各グループから挙げられたものには、「学生を上の空にさせないための工夫はあるか」「学生の反応を確認させる方法は」といった実際の授業の場で生じた疑問や、「学生間のコミュニケーションをどう活性化できるか」「学生のICTリテラシーをどう高めることができるか」といった学生生活全体にも関係する疑問、あるいはMOOCの制作コストや期間、サポート体制に関する質問や、オンライン授業と対面授業の使い分けの方法のように、講義で扱われたテーマに即したものなど、多様な質問がありました。これらの質問に対して各講師からは、「学生によるアウトプットの機会を設けることが重要だ」や「学生のカメラをオン・オフさせるタイミングをはっきりさせると良い」「学生間のコミュニケーションを促す方法として、PandAのフォーラム機能を使うというものがある」「一般的に、レクチャーベースの授業がオンライン授業に向いており、大学院の授業のようなディスカッションベースで成り立つ授業、創発的な場は対面授業と親和性がある」「形式関係なく共通して重要な観点があり使い分けとバランスが重要だ」といった返答がありました。
 セッション終了後も、質問のために残られる参加者も見られ、本セミナーまでに半期のオンライン授業・講習会等を経験された参加者にとって、改めてオンライン授業について考え今後を展望するとともに、明日以降の授業に役立つ知識を得る場として大変有意義な機会となったようです。