新任教員教育セミナー(2020.9.24開催)

テーマ2「研究室運営を考える」

  • 事例紹介:宮野 公樹 准教授(学際融合教育研究推進センター)
  • ファシリテータ:岡本 雅子 特定講師(高等教育研究開発推進センター)

 本セッションには、63名の方が参加されました。参加された先生方のご要望を把握するため、セッションの初めに先生方に対し「このセッションを選んだ理由(動機)」についてZoom のチャット機能を使って投稿するよう要請しました。その回答は、「研究室の運営のコツを聞きたい」「研究室の運営の難しさを学生の時から感じていたから」「ラボ運営、人間関係の構築が良いサイエンスのためには必須だから」「学生のモチベーションを上げる方法を知りたい」「様々な院生への対応の引き出しを増やしたい」など、「研究室運営」と「人材育成」に関する理由(動機)が多数を占めていました。この結果を受けて、宮野准教授は、「より良い研究室内コミュニケーションづくり~調査結果と事例から~」と題し、研究室運営を考える上で必要とされる(1)環境、(2)人材、(3)役割の3つの視点からミニレクチャーを実施しました。
 宮野准教授のミニレクチャーについての要旨は、以下の通りです。
「研究室は学部と社会の中間に位置している。研究室と社会とのギャップを埋めるために新入社員研修がありますが、学部と研究室のギャップを埋めるための研修等は存在しておらず、研究室は大きなギャップを内在していると考えています。このような状況の下、研究室は、数年で学生や教員が入れ替わりますが、研究室では、『研究』『教育』『社会貢献』のすべてを担うよう求められます。また、大学教員は必ずしも教育のプロではありませんが、教育(人材育成)も研究室の大事な役割のひとつとされています。研究室という組織自身を活性化させるためには、『研究ドリブン』から『人材育成ドリブン』にシフトしていくことが重要です。そのためには、教員は学生とのコミュニケーションの取り方(目的)を変えることが必要となりますので、まずは学生のモチベーションを知ることから始めると良いと思います。具体的なモチベーションの探り方として、『学生とのコミュニケーションチェックリスト(ミヤノ版)』を用意しましたので参考にしてください。さらに、コーチングでよく使われる手法ですが、学生をコミュニケーションのスタイル(プロモーター、コントローラー、アナライザー、サポーター)に分けて、それぞれに適した指導を行うのも良いでしょう。さらに、私見ですが、教員の想いを学生に伝えておくも重要であると思っています。最後に、研究室運営をよりよくするためには、(1)あなたの価値(自分のありたい姿(価値)はどこにあるのか、どんな学生を世に送りだしたいのか、研究を通して何がどうなったら嬉しいのか)、つまり、コミュニケーションの目的は「価値共有」であることを学生に伝えることによって、結果として信頼関係を築くことができると考えています」
 続いて、ミニレクチャーを踏まえて、参加者から実際の研究室運営での悩みに係る質問がなされました。具体的には、「学生同士のつながりをエンカレッジする方法」「新人の勧誘方法」「ゼミ合宿のやり方や目的についてのノウハウ」「コロナ禍で学生と対面でコミュニケーションする機会が減っており、ZoomやSNSなどを活用した学生への働きかけの方法や注意すべき点について」など活発な意見交換が行われ、今後の研究室運営に活用できる方法論などを学べる有意義なセッションとなりました。