新任教員教育セミナー(2019.9.13開催)

テーマ4「アクティブラーニング型授業をやってみよう」

  • 事例紹介:津田 真弘 講師(薬学研究科)・松下 佳代 教授(高等教育研究開発推進センター)
  • ファシリテータ:鈴木 健雄 特定研究員(高等教育研究開発推進センター)

 アクティブラーニング部会には、13の研究科・研究所等から16名の教員が参加しました。机が取り払われ、椅子だけが並べられた会場の様子に、当初、今から何が始まるのかという顔の参加者達でしたが、津田先生の講義そしてワークが始まるとすぐに合点がいったようで、和やかに研修が始まりました。
 本セッションの特徴は、アクティブラーニングのやり方や心得を説明するだけでなく、それを参加者に体験してもらう点にあります。そのため、津田先生によるスライドを用いた説明と参加者によるワークとが入れ子構造のように組み込まれ、構成されていました。
 講師紹介と趣旨説明のあと参加者は、まずはアイスブレイクとして、4人1グループとなり、自己紹介とともになぜアクティブラーニング部会を選んだのかを話し合いました。この段階で参加者の顔には笑顔が見られ、和やかな雰囲気となっていました。津田先生によるとアクティブラーニングを実施する上でアイスブレイクは重要で、逆にアイスブレイクなしに、「さぁこれこれについて話し合ってください」といってもそのワークはなかなかうまく機能しないとのことでした。
 続いて、アクティブラーニングを積極的に取り入れている事例として、薬学部で実施されている「薬学研究SGD(Small Group Discussion)演習」が紹介されました。同演習は、「世界最高水準の “創と療” の薬学教育研究拠点の形成」という薬学部・薬学研究科の目的を達成するべく実施されたカリキュラム改革の成果の一つで、2018年度から始まったものです。授業の全体構成とともに、研究者・医療従事者を目指す1回生向けの内容としてコミュニケーション技術の育成や論理的思考力の醸成などを重視している点が説明されました。
 その後、同演習で実際に行われている2つのワークが実施されました。一つが、「非言語コミュニケーション」を体感するワーク、もう一つが医療倫理を巡って異なる意見をもつ参加者同士が議論し、その議論を発展させるワークです。前者については、<知識や情報としては「当たり前」と思われるようなことでも、実際に体験してもらった上で説明すると感じ方が全く異なる。そのため、ワークの順番としても体験させた上で説明という順番が有効である>という説明がなされました。後者では、乳がん患者の事例について議論した後、「プラセボ対照臨床試験」という専門的な題材をもとに、プラセボ(偽薬)を使った臨床試験を受けた患者や家族が思いを語るビデオを視聴し、その上で、シンク・ペア・シェア(Think-Pair-Share=まず個人で考え、その考えをペアで話し合い、そして全体で共有するというアクティブラーニングの手法)によって、その是非を考え、議論してもらいました。クリッカーも用いられたこのワークを通じて、大規模授業であっても、個人からペア、グループと繋げることで、有意義なアクティブラーニングができることを参加者は実感したようです。
 最後の全体でのディスカッションでは、「アクティブラーニングを実施する上で、医療倫理のように答えのない(複数の答えがある)題材なら良いが、物理学や化学のようなある程度、正しい答えが想定される題材を扱う場合どうすれば良いか」や「答えのない題材を考える上で、一回生の段階では、考えるための教養が不足しているのではないか。どのように対応しているのか」といった質問がありました。前者については、薬学研究科の別分野で実施されている反転授業の事例が紹介され、一方、後者については、「受験勉強を終えたばかりの学生にとっては答えが一つに定まらないということを実感してもらい、薬学以外にも、考えるための材料を学ぶ必要があると感じてもらうことが重要である」との返答がありました。また国外での教育経験が長いという参加者の一人からは、「教授パラダイム」から「学習パラダイム」への転換は国外ではすでに当たり前となっており、これから本学においても自明のものとなってくるのではという言葉とともに、教える側の態度の転換と自発的な学習を促すための構造づくりが今後、一層重要になってくるだろうという問題提起がありました。
 このように盛んな議論を経て、本セッションは終了しました。セッション終了後も、参加者が残って意見交換する姿が見られるなど、アクティブラーニングに対する知識や認識を深めるという点だけでなく、日々の教育実践を見つめ直すという点においても「アクティブ」な学びの機会となったようでした。

当日の様子