新任教員教育セミナー(2019.9.13開催)

テーマ3「困難を抱えた学生に向き合うには」

  • 事例紹介:和田 竜太 講師(学生総合支援センターカウンセリングルーム)
  • ファシリテータ:勝間 理沙 特定助教(高等教育研究開発推進センター)

 京都大学における学生支援をテーマにした本セッションでは,18名の方が参加されました。はじめに和田先生より,冒頭40分ほどでミニ講義が行われました。講義の中では,「京都大学における学生支援について,「カウンセリングルーム相談件数」や「相談内容」,「自殺」や「留年」の状況,「ハラスメント相談件数」などを実際の数値を提示してご説明されました。また,学生の実際の相談内容についての事例も紹介されました。学生の相談内容には,学業や人間関係のみならず,生きがいやアイデンティティなど,さまざまな不適応の様相があることが示されました。そして,それらの学生のさまざまな悩みや困難を「知る」あるいは「気づく」ための話の「聴き方」が重要であることが語られました。
 ミニ講義の流れを受けて,後半では,その「聴き方」として「傾聴」の体験実習が行われました。まず,「傾聴」とはどのような聴き方なのかということについて,「非指示的リード」,「オープン・クエスチョン」,「非言語的メッセージの意識化」の説明がありました。その後,3人1組になり,「悩める学生役」,「相談に乗る教員役」,「観察者(見守り手)」の役割をそれぞれ与えられ,準備(役作り)→相談のロールプレイ→振り返りで1セッションという流れでロールプレイを行っていきました。セッションは3回行われ,3人がすべての役割を経験しました。参加者は,それぞれの役割を演じることで,学生の悩みを聴くことや,相談する学生の状況や気もちを想像することの難しさなどを感じていたようでした。時間の関係上,全体での振り返りはありませんでしたが,それぞれのセッションの振り返りの時間の中で,参加者各々がロールプレイの中で感じたことや日頃の困りごとなどについて活発に意見交換を行っていました。
 最後に和田先生から語られたことは,「学生との関わりのすべての場面で「傾聴」のみを重視することは現実的ではない」ということでした。教員の役割の中で学生を「指導する」ことは重要な仕事の一つで,そのような「指導」の中で常に「傾聴」することは現実的ではなく,ときには「アドバイス」したり,「指示・注意」,「叱咤激励」したりすることも必要な場面もあるだろうとおっしゃられました。これは,「傾聴」の適用についての重要なメッセージであると感じられました。
 現在の学生の状況を知るだけでなく,相談の際にどのようなことが重要であるかといった実践的なことも学ぶことができ,大変有意義なセッションとなりました。

当日の様子