新任教員教育セミナー(2019.9.13開催)

テーマ1「留学生とどう向き合うか」

  • 事例紹介:鈴木 あるの 講師(理学研究科附属サイエンス連携探索センター(SACRA)国際戦略部門)
  • ファシリテータ:Nikan Sadehvandi 研究員・河野 亘 研究員(高等教育研究開発推進センター)

 10名が参加された本セッションの冒頭では、まず、鈴木先生から本学における留学生受け入れの現場で遭遇しがちな具体的な問題がいくつか紹介されました。また、現在の留学生をめぐる状況として、我が国の留学生関連施策による受け入れ数の増加や、交換留学や短期留学などの留学形態の多様化と制度の複雑さ、本学における現状の紹介がありました。また、留学生の増加に伴い奨学金などの競争率は上がっているものの、以前と比べて留学生の経済力や質に対する要求は確実に上がっているということ、それに対して受け入れ側も意識改革をしなければならないこと、そして留学生が本当に求めている大学のサポートは何なのかということを、海外の事例と比較しながら触れられました。
 さらに、留学生と向き合う上での基本情報として、留学生が自国で受けてきた教育や、日本についての理解や期待、⾷事をはじめとする生活文化、家族観・恋愛観のちがいなどが紹介されました。特に氏名の読み方や呼び方などについては、参加者からもこれまでの経験が共有され、早速に議論が始まりました。
 これらの情報の共有のあと、鈴木先生がこれまでに実際に留学生から受けた具体的な相談事例をもとに、参加者の関心を聞き、多くの参加者の関心を集めた事例を中心に、全体でのディスカッションをおこないました。議論のトピックは、研究室での学生間のコミュニケーションや、宗教などの文化・社会的側面の理解、授業内で政治的な話題を扱う際に留意すべきことなど、多岐にわたりました。
 一例として、留学生から生活をめぐる各種手続きに関して助けを求められた場合に、教員 としてどこまで介入し対応すべきなのか、という問題が提起されました。ここでは、大学の各部局の人件費予算を含む支援体制や、京都市や京都府などの行政によるサポート(日本語ボランティアなど)が紹介され、それらを把握しておくことや、困っている留学生をサポートできるような国際的な学生を育てていくことの重要性が指摘されました。
 全体でのディスカッションの中で、複数の参加者から、今回取り上げられた多くが留学生に固有の課題ではないという意見が出されました。それに対して鈴木先生は、それは大変重要な視点であり、留学生と国内出身学生を区別しないことこそ本来あるべき考え方であると述べました。また、文化の違いから対応に悩んでしまうときは、教員側で推測して判断せず、相手の意向をその都度確認することが大切であることも繰り返し強調されました。
授業や研究室運営に関しては、留学生を含む全ての学生に対して、個々に真摯に対応すべきであるということには反対意見はありませんでしたが、その一方で、限られた授業時間内にその科目や分野に無関係な異文化理解について議論している時間がないという意見もありました。
 学生の多様性の問題と直結する重要なテーマのもとで、参加者の関心に基づき、活発な意見交換が交わされたセッションとなりました。

当日の様子