新任教員教育セミナー(2018.9.19開催)

テーマ4「アクティブラーニング型授業をやってみよう」

  • 事例紹介:津田 真弘 講師(薬学研究科)・松下 佳代 教授(高等教育研究開発推進センター)
  • ファシリテータ:川内 亜希子 研究員(高等教育研究開発推進センター)

 アクティブラーニング部会は、参加者23名で行われた。まず机を全て取り払って椅子だけを並べた形式でスタートした。研修としては珍しい配置に、当初は多くの参加者が戸惑っているようにも見えた。しかし、最初のアイスブレイクが始まると、そうした配置にも納得がいった様子で、和やかに研修がスタートした。京大に着任された先生方がまずワークをし、アイスブレイクを体感するという経験は、アクティブラーニングに対するとっつきにくさを取りはらう上で効果的であった。
 続いて、薬学部で行われている「薬学研究SGD演習」について説明が行われ、その授業を通して実際に学生のコミュニケーション能力の向上や自学自習の促進が見られることが参加者に伝わると、実際にどんな授業を行えば効果的なのか、ということについて参加者が関心をもって聞き始めた様子が伝わってきた。
 その後2つのワークが行われた。まずは「非言語的コミュニケーション」を体感するワークである。このワークでは参加者が2列に向かい合って並び、さまざまな距離で挨拶をすることを通じて、他者との距離感を参加者が体感する活動が行われた。このワークを通じて、コミュニケーションをとる際の適切な距離、例えば授業を行う上での教員と学生の適切な距離を学ぶことができた。それに加えて、ワークを行う際には、指示を明確に伝えるために次に何をするのかを画面上に表示しておくこと、またこのワークを通して何が分かるのか、ということを先に説明するのではなく、実際に学生に体験させた後、解説するという順番が効果的であることの2点が「授業を考える際のポイント」として示された。
 続いて、「医療倫理」を題材にしたワークが行われた。このワークでは、まず、医療者が直面するジレンマ状況でどう判断するかという具体的な課題を与え、手持ちのスマートフォンを利用したクリッカーを使って、適切な対応はどれかを選んでもらった。こうした課題とツールをうまく使うことで、大人数の講義においても学生を能動的に参加させ、教員も学生全員の意見を把握することができることを参加者は体感していた。次に、「プラセボ対照臨床試験は認められるか?」という、より薬学の専門に関わる課題が提示された。まず、一般的にその是非を考えた後、その臨床試験を受けた家族が思いを語るビデオを視聴して、あらためてプラセボ試験の是非をシンク・ペア・シェア(Think-Pair-Share=まず個人で考え、その考えをペアで話し合い、そして全体で共有するというアクティブラーニングの手法)で議論した。このワークを通じて、個人からクラス全体へとつなぎながら、全体的な参加を促すことができることを参加者は学んでいた。
 このように、本部会は、アクティブラーニングの手法をただ座学で学ぶだけでなく、実際に参加者自らが体感して学べるようデザインされていたため、大変盛り上がり、質疑応答も積極的に行われた。参加者からは「アクティブラーニングは答えのある授業でも有効か」「グループワークが苦手な学生(とくにコミュニケーション面での障害をもつ学生)にどう配慮するのか」「アクティブラーニングの学習成果をどう評価するのか」といった重要な質問が寄せられた。それらに対しては、そもそもクリッカーがハーバード大学の物理学の大講義から生まれたものであり、取り入れ方によってうまく運営していけること、SGD演習も必修科目とはせずにグループワークの苦手な学生に配慮を行ったこと、現在、この授業の効果検証を計画中であること、などが補足説明された。また今後アクティブラーニングを実際に取り入れていく上で、教員自らが答えのない問いというものに慣れるということの必要性が、「授業を考える際のポイント2」として示された。
 この部会では、アクティブラーニングを実際に取り入れている薬学部の授業の紹介がなされ、参加者が体験しながら学ぶスタイルが採られたたことで、アクティブラーニングが効果的であることが参加者によく伝わっていた。本部会に参加することで、今後アクティブラーニングを取り入れる際のハードルが少し低くなったのではないか、と思われる。

当日の様子