新任教員教育セミナー(2018.9.19開催)

テーマ3「困難を抱えた学生に向き合うには」

  • 事例紹介:中川 純子 准教授(学生総合支援センターカウンセリングルーム)
  • ファシリテータ:鈴木 健雄 特定研究員(高等教育研究開発推進センター)

 18名が参加した本セッションでは、まず、中川先生より「困難を抱えた学生に向き合うには」というミニレクチャーがありました(約40分)。京都大学における修学上、研究指導上の不適応を起こした学生・院生の状況について、その概要が具体的な数字とともに示されたあと、大学生活における学生のさまざまなつまずき(学業での停滞、人間関係のこじれ、失恋・いじめ・ハラスメント、性格やメンタルな悩み、発達障害など)の事例の一端が紹介されました。また、それに対応するには、専門家による支援だけでなく、所属部局という学生の「ホーム」での対応もまた重要であることが語られました。
 中川先生が強調されたことは悩みを聴く際の「傾聴」の重要性です。まずはただ相手の話を聴く、悩みそのものを否定せずただ感じようとすることに努める、といったことが、〈傾聴の基本的な方針〉となります。そして十分話してもらうために、「非指示的リード」(「というと?」「それからどうなったの?」など)と「オープン・クエスチョン」(「どんなふうに感じました?」「何が一番**なの?」など)を心がけます。また、相手の話を聴く際に、どのように相手からは見えているのか、非言語的メッセージ(「視線」「姿勢」「相づち」など)を意識化する必要もあります。例えば腕を組んだ姿勢だと、相談を受け入れていないような印象を与えてしまいます。また、ついやりがちなこととして、パソコン画面を見たまま話を聞くことが挙げられますが、こちらも拒絶的な印象を与えてしまい避けたほうが良いとの指摘がありました。
 次に、ミニレクチャーの内容を受けて、実際に学生の相談に乗るロールプレイ実習を行ってもらいました(約50分)。参加者は3人一組となり、悩める学生役、相談に乗る教員役、観察者兼時計係に分かれます。15分(準備1分、相談8分、ふり返り7分)のセッションが終わるごとに役割を交代してもらい、それを3回行ってもらうことで、すべての役割を経験してもらいました。ふり返りの場では、教員役の参加者から、自分では気がつかなかったが、そのように人の話を聴いていたのかと驚く声があがったり、学生役から、教員役がメモを取ってくれたことが、聞いてもらえているという実感に繋がり嬉しかったという声があがるなど、実際に演じてみることでの気づきも多かったようです。
 その後、実習で出た意見をもとに、全体での質疑応答がありました(約20分)。どのタイミングで学生に声をかけたら良いのかや、教員という立場で病院等を紹介して良いかといった質問があり、それに対しては、なるべく早く、教員一人で抱え込むことないように専門の機関も紹介して、という返答がありました。また、学内の診療所や、留学生専用の窓口があることについても説明がありました。最後は、実習の振り返りとともに、相談者から話を聴く際の留意点について中川先生より説明がありました。例えばアドバイスは説得させることを目的にするのではなく、まずはその前に話をよく聞いてから、声のトーンを温かく穏やかにしながら、短く控えめ(10秒以内)にすること、あるいは次はいつ来ますか、と最後に声をかけてあげることなどです。実習でアドバイスをする難しさを経験した参加者にとって、こちらも非常に参考になったようでした。

当日の様子