新任教員教育セミナー(2017.9.6開催)

テーマ4「講義科目でおこなうアクティブラーニング型授業」

  • 事例紹介:溝上 慎一 教授(高等教育研究開発推進センター)
  • ファシリテータ:河合 直樹 研究員(高等教育研究開発推進センター)

 アクティブラーニング部会は、参加者9名(うち5名は教職に初着任)で行われた。机をすべて取り払って椅子を円形に並べた珍しい配置に、当初は多くの参加者が戸惑いを呈していたが、溝上教授の「これも教員と学生との距離感、つまりパーソナルスペースに配慮する一つの工夫です」という説明に、これから始まるワークショップへの期待感を募らせているようであった。続いて教授は「授業は、開始前の学生とのアイコンタクトから、すでに始まっている」と語り、授業は学生とともにつくっていくものであるという基本姿勢を強調した。一方、安直なグループワークの実施に対しては警鐘を鳴らし、効果的な問いの設定や安心して対話できる雰囲気づくりの重要性を指摘した。そのうえで、参加者は、その日の昼食について語り合うワークを行い、一定時間ストーリーを語り続けることの難しさを実感した。そして教授は、学生の多様な自己表現を促すために行ってきた実践をいくつか紹介し、グループ活動を通じて学生の成長を支援する必要性を説いた。その後の「授業で問題だと感じていること」をテーマにした対話では、自分とは異なる意見に対する受容的な態度や、自分の意見を発することに消極的な学生への対応などを議論することで、参加者は少しずつ部会テーマを自身の関心に引き寄せているようであった。それから教授は、ある高校で数年来取り組んでいるアクティブラーニング型授業(AL型授業)の導入プロジェクトを紹介し、「AL型授業のような主体的な学習活動で育ってきた生徒を京大が受け入れる準備はできているだろうか」という問いを参加者に投げかけた。それを踏まえて、参加者はこれまでの議論で感じたことを共有し、AL型授業の可能性や課題、評価の方法を検討した。終盤には「本当の意味の学力とは何か?知識が豊富ならいいのか?」といった根源的な問いが参加者から発せられ、今日における「京大らしい授業」の在り方について多角的な意見が交わされた。グループワークを通じて参加者自身がアクティブラーニングの一端を体験することで、学生の主体的な学習を促す授業設計を「自分事」として考える有意義な時間となった。

当日の様子