新任教員教育セミナー(2013.9.10開催)

グループ5「困難を抱えた学生に向き合うには」

  • 報告者:三宅 秀彦 特定准教授(医学研究科)
  • 事例紹介:上床 輝久 助教(健康科学センター)
  • ファシリテータ:大塚 雄作 教授(高等教育研究開発推進センター)

 参加者は11名でしたが、それぞれ問題意識を抱えて参加されていました。困難といいましても、身体的な問題とメンタルな問題があるのですが、今回はメンタルな問題を中心に取り扱いました。メンタルな問題も、いろいろなパターンでその症状が出てくる。症状というと変ですが、不登校や退学、うまく講義に出て来ない、学校ではふらふらしているのに講義にだけは出て来ないといったいろいろなパターンで怠学が出てきたり、また学力上についていけなくなってくるということも一つの心理的な困難で、問題が表れていることも考えられます。

 また、行動上の問題として、抑うつ的になったり、衝動的になったり、また多く人の集まっているセミナーの場でいきなり他人の批判を始めるなど、他者を巻き込むような問題行動に出たりすることもあります。こういったものがどうして起きてくるのかというのは、先ほどもありましたが、学力の差があったり、また留学生の方の場合、言語の問題や環境の問題があったりもします。また、入学したばかりの方であれば、バーンアウト、受験教育から普通の大学教育についていけないというようなこともあります。また、もともとご本人が持っていらっしゃる性格。また、一部には器質的な疾患、精神疾患、うつ病、統合失調症、その他には、パーソナリティ障害、自閉症スペクトラム障害のような問題もあるかもしれません。それにさらに環境が影響してきて、問題が表面化してくることになります。

 上床先生に事例は(プライバシーの問題がありますので)仮想の事例で紹介していただきました。自閉症スペクトラム障害のスクリーニングで、自閉症スペクトラム指数というのがあるのですが、これを用いた調査では、京大の学生は5%ぐらいで(スクリーニングの)識別点を越えるというような報告も頂きまして、もともとそういった資質を持っている方は決して少なくない。ただ、知能が高い分だけそれをマスクしていることがあるかもしれません。事例が表面化した場合の面接などが特に討論に挙がったのですが、プライバシー、人権、心理状態も配慮して、とにかく傾聴を心がけ、相手との話し合いの基盤をきちんと作ってあげることが大事ではないかということになりました。

 ただし、いきなりいなくなってしまう人にどう対応するかは非常に難しい問題で、入学したばかりで人間関係ができる前にいきなりいなくなってしまった場合には、対応がなかなか難しいことが挙げられました。実際,こういった事例に対しては、まず紹介する。相談するのはどこかというと、一つは健康科学センター、そしてカウンセリングセンターになりますので、そういったところときちんとつながりを持って連絡していくこと。また、特殊なケースの場合には、例えば保健診療所の神経科に相談する。また、神経科にいきなり行きにくい場合には内科から紹介してもらうという手もあるようです。とにかく,まずは、カウンセリングセンター、健康科学センターを気軽に利用する姿勢を持つことが大事かもしれません。

 また、器質的疾患を抱えている場合もあるため、適切な医療介入を本人のためにもしてあげることが必要かもしれません。これを見つけることも非常に大事なのですが、事例が起きてからの対応も大事ですが、事例が起きる前に何ができるか。やはり担当教官の普段からの目配りが大事であります。しかも、それは自分の思い込みだけで判断するのではなく、いろいろな助教、講師、准教授、いろいろな見守りの中で多数の目から多数の判断を持って目配りを行い、学業面だけではなく、生活面や複数のルートで学生を見守ることが重要ではないかと考えられます。以上です。