新任教員教育セミナー(2011.9.1開催)

グループ6「博士課程院生のキャリア形成支援」

  • 報告者:環境安全保健機構 助教 安田 幸司
  • 事例紹介:キャリアサポートセンター 教授 梅田 幹雄
  • ファシリテータ:高等教育研究開発推進センター 特定助教 半澤 礼之

環境安全保健機構の安田と申します。我々グループ6におきましては、「博士課程院生のキャリア形成支援」というテーマに関しまして、キャリアサポートセンターの梅田先生、そしてファシリテータの半澤先生のもと、我々の方8名合わせまして、計10名でディスカッションを行いました。我々のグループの方々は、実はここに来るまでにいろいろなキャリアを積んでこられた方ばかりで、皆様苦労をされているということでして、それぞれの経験に基づいた,ディスカッションとなりました。

まず、,「博士課程院生のキャリア形成支援」というテーマを議論する上で、とても重要な点としては、何より京大の博士課程学生はアカデミア志望が多い。その一方で、アカデミアとして就職できる大学院生の具体的な数字を把握しておかないといけないと思います。
皆さん、その値が何パーセント程度かご存知でしょうか?この点について梅田先生からいただいた情報によりますと、配付資料37頁の右下の方に赤字で書いてありますように、博士課程の院生で、アカデミアへの就職率はわずか10%です。すなわち10人の学生がいるとすれば、そのうちアカデミアへ行くのが1人、それ以外へ進むのが9人です。この点について、アメリカは率が高いらしいのですが、それでも25%程度だということです。アカデミアへの就職は困難だという現状を踏まえておかなくてはいけません。我々は教員として大学院生の進路指導をしないといけませんが、我々というのはアカデミアの住人です。つまり、アカデミアへの道の進路指導は容易にできるわけですが、それ以外の道、それは主に産業界になるわけですが、そういった方向への進路指導を行うというのは非常に難しいため、どのように取り組んでいけばよいのだろうということをこのグループではディスカッションさせていただきました。色々と議論させていただいたのですが、こういった話は簡単に答えがでるものではなく、地道に見ていかなければいけないという方向で議論が進みました。そこで大きく3つほど、方向性について提案が出ましたのでここで報告させていただきます。

第一に、大学の中だけにいますと、学生が触れ合うのは、我々のような教員に偏ってしまうということがあります。大学院生を産業界にも送り込むといったことを考えた場合、彼らにとってアカデミアと産業界といった異なる選択肢がある中で、片方にしか触れる機会がないということはあまりよろしくない。ですので、アカデミアの側として成功している大学教員だけではなく、産業側で就職した人間側の情報も得られるようにしないといけない。そのためには、研究室の中ではきちんと研究の指導をするものの、学外に出たときには、たとえば学会では発表だけをさせるのではなく、企業の方々との懇親会の場など、様々な領域の方と関与できる場をきちんと学生に対して作らないといけないといったことがあげられると思います。

第二に、そういう他領域の方との場においては、自分の研究領域の話をできるだけで十分とはいえません。例えば、研究一つに関しても、バックグラウンドを含めて幅広くかつ色々な角度の切り口で語ることができるようにしておき、相手と話せる話題を数多く持てるようにしておくことが重要なのです。そのためには、論文執筆などの研究出力を出すだけでいっぱいいっぱいにさせなるのではなくて、自分の研究を様々な側面から見ることができるような、バックグラウンドからきちんと勉強する時間を学生に与えないといけないということが考えられるのではないでしょうか。

最後に、大学院生が志望の視野に入れる企業に関して、選択肢の幅という問題があります。すなわち、京大は大学としては全国でも高いレベルにあるわけですが、大学院生の就職に関しては無理にネームバリューの高い企業を求めないということです。名が知れておらずとも実力を兼ね備えており、かつ新戦力を求める企業も日本には数多くあるわけで、我々教員側も産業界のそのような事柄について具体的に知っておかないといけないです。そして、研究室に所属する学生に対しては、アカデミアと産業界の良いところと悪いところの情報を、包み隠さずに両方まとめて発信するといったことをしていかなくてはいけないと思います。

まとめますと、産学の現実の状況を広く踏まえて指導していけば、博士課程学生のキャリア支援にもなると期待しております。
またその結果、産業界の状況を見ながらもアカデミアを選択したという学生が、時がたって指導する立場になった時代には、現在と比べてより産学の両方の視点を持った教員ということになります。このようにすることで、10年後20年後といったスパンで、徐々に支援の体勢ができるようになっていけるものと考えており思います。以上です。

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セミナーの映像は、京都大学OCWでご覧頂けます。
下記URLより、どうぞご覧ください。

https://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/center-for-the-promotion-of-excellence-in-higher-jp/02

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