新任教員教育セミナー(2010.9.3開催)

グループ6「自学自習・授業外学習をどう促すか?」

  • 報告者:経営管理研究部 講師 山内 裕
  • 事例紹介:工学研究科 教授 鉾井 修一
  • ファシリテータ:高等教育研究開発推進センター 特定研究員 藤本 夕衣

経営管理研究部の山内です。実は、私、昨日着任し、昨日の朝、小林先生から今日のセミナーへの参加を勧められた次第ですので、授業をまだ何もしたことがありません。

私たちのグループでは、自学自習ということで授業外の学習をどう行うか、について議論しました。まず、鉾井先生から、関連する調査結果をご紹介いただきました。それは、溝上先生が別のシンポジウムで発表された内容だと聞いています。

具体的には、たとえば「京都大学の学生は授業を結構とっている」という結果や、「一方で授業外の学習がほとんどされていない」という結果が紹介されました。このことを聞いた時に、私は「授業に出ているのでいいことだ」と思ったのですが、そこに問題があるというご指摘がありました。というのも、「授業をとっているからといって、それに習熟しているのではない」という事実があるからです。授業に積極的に参加し、かつ授業外の学習をしている人は、習熟度が高い。一方で、授業に参加していても授業外の学習が少ない人は、習熟度が低い、ということです。そして、授業にあまり参加せず、授業外の学習が多い人は、実は結構習熟度が高い。こうした結果が出ているようです。鉾井先生は、授業で一番前に座って真面目にノートをとっている学生が、実際に試験をしてみると成績が悪く、後ろでしゃべっている学生の方がよくできる、といった例をお話しされました。そういう例もあるために、授業外の学習をできるだけ多くしていくことが重視される、ということでした。

また、大学の設置基準について紹介もありました。大学設置基準では単位制度というものが定められており、一単位を認定するのに45時間勉強しなければならない、という規定があります。ですので、15コマでは、15時間は授業でとりますので、30時間の授業外の学習が必要になります。この規定を学生が知っているか、ということは分かりませんが、この単位制度を実質化することと、授業外学習を重視するという課題が重なってくる、というご指摘がありました。

そこで、私たちは、どうすれば授業外学習を促すことができるのか、ということについてディスカッションしました。そこで提案されたことをいくつか紹介したいと思います。

一つは、演習を行う、ということ。鉾井先生からも「演習をやると実は学生はすごく真面目に一生懸命やってくる」ということを教えていただきました。二つ目は、グループ学習を導入するということです。私の個人的な話になりますけれども、たとえば担当する授業では、フィールド調査を教えないといけないことになっています。そこで、グループで外に出て行ってもらったりとかする必要があるのですが、これを実際にやってもらえるのか、という不安がありました。ですが、グループ学習をすることによって、学生同士の人間関係ができ、さらにその関係が支えとなって学習へのモチベーションも高まるであろう、という議論もあり、自分の担当するフィールド調査もやっていけるのではないか、と見通しをもつことができました。三つ目は、試験や評価を工夫するという方法が挙げられました。試験に出題される、といったことがあると、授業外でも勉強しようとモチベーションを上げることにつながるという議論も出ました。あるいは就職につながるというようなことを教えるということも議論しました。もちろん教員としては、就職につながるような知識を教えなければならないと同時に、役に立たないけれども重要な知識というのもある、ということを考えていかなければいけない、という問題があることも考慮していかなければいけないでしょう。また最後に議論されたこととして、TAの存在があります。TAは、演習などを行っていくうえで必要になるだけではありません。TAは、学生からすると身近な存在であることから、学生のよき相談相手にもなります。さらに、TAを担当する院生にとっては、教えることが自分自身の学びにもつながる、という効果もあり、大学全体にとってTAを重視していくことが不可欠ではないか、という議論になりました。ところが、実は予算削減でTAが削減されようとしていると。これは非常に問題ある状況かなと思います。 私たちが、最終的に出したもっとも重要な結論としましては、TAを削減するのだけはやめてほしい、むしろTAを増やしてほしい、と西村理事にお伝えしたい、ということでした。

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セミナーの映像は、京都大学OCWでご覧頂けます。
下記URLより、どうぞご覧ください。

https://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/center-for-the-promotion-of-excellence-in-higher-jp/01

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