新任教員教育セミナー(2017.9.6開催)

テーマ3「困難を抱えた学生に向き合うには」

  • 事例紹介:中川 純子 准教授(学生総合支援センターカウンセリングルーム)
  • ファシリテータ:斎藤 有吾 特定助教(高等教育研究開発推進センター)

 本グループには15名の参加がありました。まず、中川先生に「困難を抱えた学生に向き合うには」というタイトルでミニレクチャーを行っていただき(約40分)、次に、参加者全員が「ロールプレイ実習」に取り組み(約50分)、最後に、ロールプレイ実習の振り返りや追加のレクチャーと質疑応答を行いました(約20分)。

1.ミニレクチャー
 ミニレクチャーでは、まず、京都大学における自殺や留年の状況、そういった困難を抱えた学生に対する支援体制、カウンセリングルームの相談件数などの概要が示されました。そののち、大学生活における学生のさまざまなつまずき(学業での停滞、人間関係のこじれ、失恋・いじめ・ハラスメント、性格やメンタルな悩み、発達障害など)の事例の一端が紹介されました。また、それに対応するには、専門家任せにするのではなく、所属部局という学生の「ホーム」での指導教員による面談が重要であることが語られました。
 中川先生が強調されたことは悩みを聴く際の「傾聴」です。まずはただ相手の話を聴く、悩みそのものを否定せずただ感じようとすることに努める、といったことが、〈傾聴の基本的な方針〉となります。そして十分話してもらうために、「非指示的リード」(「というと?」「それからどうなったの?」など)と「オープン・クエスチョン」(「どんなふうに感じました?」「何が一番**なの?」など)を心がけます。また、非言語的メッセージ(「視線」「姿勢」「相づち」など)を意識化する必要もあります。これは、相手の話を聴く際に、どのように相手からは見えているのか、ということです。例えば腕を組んだ姿勢だと、相談を受け入れていないような印象を相手に与えてしまうことに留意する必要があります。

2.ロールプレイ実習
 このように、相談者の悩みを聴く際のコツや留意点をレクチャーしていただいたあと、中川先生が相談に乗る教員役、ファシリテーターの斎藤が悩める学生となって、ロールプレイを実演してみせました。
 そのあとはそれまでのレクチャーをもとにして、ロールプレイ実習を行いました。参加者が3人一組になり、悩める学生役、相談に乗る教員役、観察者兼時計係を入れ替わりながら、15分(準備1分、相談8分、ふり返り7分)×3セッションを行いました。50分近くもの間、どの参加者も熱心に取り組んでおられました。観察者からの指摘に、自分では気がつかなかったが、そのように人の話を聴いていたのかと驚いていた参加者や、すぐアドバイスしたくなってしまって、意識的に傾聴をすることの難しさを語っていたおられた参加者もおり、中川先生のレクチャー内容の重要性を実感する機会となったようでした。

3.実習後の振り返り
 最後は、中川先生から実習の振り返りとともに、相談者から話を聴いたあとや、相談者にアドバイスをする際の留意点に関するレクチャーが行われました。例えばアドバイスは説得させることを目的にするのではなく、まずはその前に話をよく聞いてから、声のトーンを温かく穏やかにしながら、短く控えめ(10秒以内)にすることなどです。実習でアドバイスをする難しさを経験した参加者にとって、こちらも非常に参考になったようでした。
このようにミニレクチャーとロールプレイ実習によって、それぞれの参加者がさまざまな学びを得たことが感じ取れました。そのことは、事後アンケートでの有意義度の高さ(4.82点)にも表れています。

当日の様子